2016年のダンボール

道路のまんなかに転がっていたコーヒーの空き缶を拾ったら、いつもは赤の横断信号が今日に限って青だった。

こういう時、神さまっているのかもと思ってしまう。

 

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臨床心理の授業を受けている。あと6分で授業が始まる。教室は人が多すぎてひどく人臭いし暑苦しい。

私の座ってる席から2つ左隣の男の子は村上春樹1973年のピンボールを読んでいる。ねずみ三部作の1つで、私は風の歌を聴けを読んでいない。

そういえば初めてこの授業を受けた時に隣の席になったのはあの男の子だったなと気付く。その時もピンボールを読んでいた。

この授業はターム開講で、もうそろっと最後の授業を迎える。未だに彼があの本を読んでるってことは、彼が普段はあまり本を読まないってことだろうと思う。

 

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知り合いが1人もいない授業は退屈だし、休めなくて辛い。でもその分人間観察できたりするからトントン。

さっき休憩の時間にトイレに行こうとしたら、ピンボールの男の子が歩いてた。なんだか空から吊られているような変わった歩き方で、歩くたびマッシュヘアーがゆさゆさ揺れてた。

足が細くてマッシュヘア…彼はもしかすると軽音団体かもしれない。

 

臨床心理の先生の顔はなんだかちょっとマッドサイエンティストっぽい。大きな土気色の顔に、嘘笑いが張り付いてる。体は風船みたいに丸くて、ちょっとしたピエロみたいだ。きっと彼の家にある暗くて冷たい地下室には誘拐した子供が何人か幽閉されていて、彼はヤングやアドラーやらの心理学者の言葉を引用しながら子供達を洗脳して、秘密裏にロボトミーの研究をしてるんだろう。

なんて妄想をしてる。授業はつまらない。

 

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授業が終わって帰り支度をする。

何を聴いて帰ろうかなと思って、Apple Musicの「ダウンロード済み」「アーティスト」をタップする。

目をつぶって適当にスクロールしてタップすると今日はceroが当たって、シャッフルで流すとなんか長い英語の名前の曲が流れた。

外に出ると雨が降ってた。お腹空いた。

 

 

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アボカドとダルマが紛失した。

主語がアボカドとダルマで、「が」を使うのはなんかおかしくない?なんて思われた細かい性格のみなさま各位におかれましてはこの場を借りて謝罪をさせていただきます。

でもなんとなく、私の中では間違ってないのだ。

一昨日高崎駅で買った手のひらサイズの赤いダルマと、昨日買ったゴツゴツ緑色のアボカド。そんなキャラの濃い2つを「私」が紛失するなんて事があるだろうか。さすがにおかしい。

そう、その2つは突如として私の家からいなくなったのである。すなわち、無くしたのは私ではなく誰かなのだ。これは私の部屋に入り込んだ犯人からのメッセージ。アボカドと…ダルマ…この2つの共通点…

…は!!!もしかして犯人は…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて妄想暴走しながらお昼休みは過ぎていくのでした。最近送ってもらった仕送りのダンボールの中にこっそりアボカドが入り込んでおりました。よっぽど食べられたくなかったのね。もう美味しく頂いちゃったけど。

仕送りに使われたダンボールの箱には「霧しなそばつゆ」の文字、賞味期限は2016.07.06だった。きっと、地元のスーパーでもらったやつだろうなと思う。

 

しかしてダルマはまだ見つからない。たぬきの為のお土産として買ってきたのに。またちゃんと探さなきゃ。ダルマには足がないから遠くには行ってないでしょう。

 

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1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)