先輩から返してもらった漫画を本棚に入れ直すのを忘れていた。部屋の隅で、服屋の紙袋ごと埃をかぶっていた。卒業する直前まで1年くらい貸したまんまだったから、もう帰ってこないかと思っていた。返してもらえてよかったなと思っていたけれど、どうせブックオフで108円で買った漫画だから、今思えば、別に帰ってこなくてもよかったような気もする。

そういや「貸す」ってのは不思議なもので、普段特に価値も見出せないものが、「貸す」ことによって価値あるものと化す。返す、という口約束が、所有をさらに強調させるからなんだろうか。それとも、「貸す」から「返す」までの間、両者は離れられないような気がするからなんだろうか。関係に価値が生まれるのか、ものに価値が生まれるのか。どっちにしても、人間っぽいなと思う。

 

久しぶりにその漫画を読んでみたけど、最後まで読みきれなかった。高校生の時、いっこ上の学年の先輩に借りて、こっそり教室で読んだ時はあんなにドキドキしたのに、もうあの時みたいには読めなかった。当時は漫画の中の少年少女がむちゃくちゃ悪いことをしていると思っていたのに、今じゃもう悪いとは思わないのである。むしろ、ありがちで、陳腐にさえ思えた。

昨日読んだミヒャエルエンデの「モモ」の方がよっぽど今の私には有難かった。

 

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 そういえばドライブに誘われた。私とその人との関係上なんだか不自然な誘い方だった。もう、「ただの友達だよね」って考えられるほど可愛い女の子じゃないから困惑している。鏡の前に立ってどうしようかと悩んでみたけれど、いくら自分と向き合っても剃り忘れた産毛が見えたりするだけで埒があかないので、とりあえず明日の服を決めることにした。いい機会だし可愛くしようと思う。

だがしかし。可愛くなるってどうやるんだっけ、どんな準備をすりゃいいんだっけ。破れてないストッキングまだあったっけ、あったわ。あーここにきて、枯れていた期間が憎い。

悩んだ末、全く着ていなかったワンピースに「可愛い」を一任することにした。ワンピースさまさま、買ってくれたお母さんありがとう。とにかく明日がしのげればそれでいい。頼んだ。ワンピース。

 

それにしても、人のために服選ぶのって、久しぶりだったけどちょっと楽しいな。こういうのが続くのもいいのかもしれないとも思う。でも面倒くさいと思うようになるんだろうなとも思う。

 

とりあえず明日は、まだ楽しみである。