姉の結婚

 

久しぶりにポストの中を漁ってみると白い厚紙の封筒が届いていた。

 黒く太い迫力ある字で宛名が書かれていて差出人は、東京の姉だった。

 バリッと開けると、おもちゃ箱をひっくり返したみたいにカラフルでハッピーな紙が中から飛び出してきた。

それは結婚式の招待状だった。

 

色とりどりの招待状の中で飛び跳ねている姉夫妻を見れば、間の抜けた笑顔に赤、青のはっぴ。そしてジーパン。

ザ・姉という感じなので笑ってしまった。

 

ただ彼女の名前の下に書かれた(旧姓 村瀬 )の文字はなかなかに衝撃的で、姉だけどもう村瀬では無いんだなと、何だか少し変な気分になった。

 

 

 

 

そういえば昨日の夜、珍しく父から電話がかかってきた。

少し酔っていて、「最近は何か面白い事とか無いのか」と、特に用事はない様子だった。その日は母が用事で居なくて、犬を相手に一人お酒を飲んでいたらしい。

酔っていたとはいえ、「心配だからたまには連絡を入れてくれないか」なんて父に言われたのは昨日が初めてで(母にはよく言われる)、どうしたのかなと思ったけど、あれは姉の招待状にやられて弱っていたからなのかもしれない。

 父にとって、娘が結婚するというのはどんな気分なんだろう。

「お前に娘はやらん!」ってドラマとかでよく聞くセリフだけど、父は姉の結婚に反対はしなかった。その結果姉はトントン拍子に結婚したけれど、父親の感じる寂しさっていうのは相手が誰でも、いつの時代でも、変わらないような気がする。

 

ファイト、父。

 

結婚式の時は父のためにハンカチを持って行ってあげようかな。いや、どうせ母も泣くからバスタオルくらい必要かもしれない。

 

父の傷が癒える事と、姉の結婚が上手くいく事を祈って。

 

今日はここまで。